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ワーキングメモリとは?役割や発達障害との関連性・調べ方を解説

ワーキングメモリとは?役割や発達障害との関連性・調べ方を解説

ワーキングメモリとは短期的な記憶力のことで、日常生活でさまざまな役割を果たしています。ワーキングメモリの容量は人によって異なり、生まれ持った素質による部分もあるため、必要な情報だけを記憶し不要な情報は捨てるといった情報処理が大切です。

当記事では、ワーキングメモリとはなにか、また役割や発達障害との関連性、ワーキングメモリの調べ方について解説します。ワーキングメモリについて興味がある方は、ぜひご一読ください。

 

1.ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリ(Working memory)とは「作業記憶」とも呼ばれ、作業する際に必要となる情報を一時的に記憶し処理する能力を指します。ワーキングメモリは会話や読み書き、簡単な計算などを行う場面で必要となる学習能力です。たとえば、質問の内容を理解すると同時に質問に対する回答を考えたり、計算する過程で必要のない数字の記憶を忘れる判断をしたりする際にワーキングメモリが必要です。

ワーキングメモリの能力には個人差があり、能力が優れていると作業効率が上がると言われています。近年ではワーキングメモリを鍛える風潮があり、多数の書籍が出版されていることからワーキングメモリの注目度の高さがうかがえます。

 

2.ワーキングメモリの役割

ワーキングメモリは、日常生活の中でさまざまな役割を担う重要性のある能力です。ワーキングメモリ機能は年齢とともに衰えていくことが判明しており、機能の低下により起きる問題として以下が挙げられます。

  • 物事の優先順位が付けられない
  • 言われたことを忘れてしまう
  • 忘れ物が多くなる
  • どこになにを置いたか思い出せず物を紛失しやすくなる

たとえば、ワーキングメモリの機能が低下している場合、仕事中に一度に多くの業務を振られた際に物事の順番が付けられず、生産性は低下する恐れがあります。

以下では、ワーキングメモリの役割について解説します。

 

2-1.優先順位を付ける

ワーキングメモリは多くの情報量を記憶し、記憶した中で重要な情報と重要でない情報を仕分け、重要でない情報に関しては忘れる働きをします。

提出期限が異なる仕事が一斉に入ってきた場合、期日順に並び替え優先順位の高い仕事から手を付ける作業にもワーキングメモリの能力が必要です。ワーキングメモリの能力が低下している場合は優先順位を決めることができず、なにから手を付けてよいか分からない事態が発生する恐れがあります。

 

2-2.記憶を一時的に覚える

ワーキングメモリの能力には、一時的に記憶を覚える働きがあります。たとえば、板書を書き写す際にワーキングメモリが適正に働いている場合、情報を集めながら重要な部分のみをピックアップしてノートに書き写すことが可能です。しかし、能力が低下していると記憶と情報の処理に時間がかかってしまうケースがあります。ワーキングメモリは、学習面において重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

ワーキングメモリが機能している場合、長期記憶として知識を定着させることにも役立つと言われています。

 

2-3.不要な情報を忘れる

不要な情報を忘れることも、ワーキングメモリの重要な役割の1つです。人間はさまざまな情報を見聞きし、自身の知識として脳に記憶を蓄積します。しかし、脳のキャパシティには限界があるため、情報を処理し必要な情報以外は忘れる作業が必要です。

ワーキングメモリが正常に機能している場合、自身にとって重要な情報のみを脳内に留めることが可能なことから、重要な事柄に集中できます。しかし、能力が低下している場合、注意力が散漫になり作業効率が下がる可能性があるため注意が必要です。

 

3.ワーキングメモリと発達障害の関連性

ワーキングメモリの低さからくる行動と発達障害の症状には、いくつかの共通点があります。発達障害とは、脳機能の発達の偏りにより人間関係のミスマッチが生じる障害です。しかし、ワーキングメモリが低いことと、発達障害であることを結論づける研究結果はありません。

ここでは、発達障害の症状と、ワーキングメモリとの関連性が高いとされている理由について解説します。

 

3-1.ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)とは、注意が欠如しやすく多動性や衝動性が多く見られる発達障害の1つです。主な特徴として、忘れ物が多く待つことが苦手で思いつくとすぐに行動してしまう点が挙げられます。

出典:厚生労働省「ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療」

ADHDの症状のうち、不注意や衝動性はワーキングメモリの低下が関連していると考えられています。理由としては、注意すべき点が分からず物忘れが多い症状がワーキングメモリの低下で見られる点と一致しているためです。

 

3-2.学習障害(LD)

学習障害(LD)とは、限局性学習症とも呼ばれ、読み書きや日常会話に加え計算などの学習能力に関する発達障害です。学習障害は「ディスクレシア(読字障害)」「ディスグラフィア(書字障害)」「ディスカリキュア(算数障害)」の3つに分類されます。種類によって異なる特性が見られるため、1人ひとりの障害にあわせた対応が求められます。

出典:厚生労働省「学習障害(限局性学習症)」

学習障害の主な症状は、文字の情報を記憶できず正しく書けない点や、計算する際に数字の処理や使い方が分からない点です。ワーキングメモリの低下により現れる情報の一時的な記憶と処理の遅れと一致しており、関連性が高いとされています。

 

4.ワーキングメモリを調べる方法

ワーキングメモリにはキャパシティがあるため、不要な情報を捨てて効率よく情報処理することが大事です。ワーキングメモリを解放する方法には、下記のようなものがあります。

・適度な睡眠とバランスのよい食事を摂る

適度な睡眠とバランスのよい食事は、脳の働きの手助けとなる重要な要素の1つです。睡眠不足の場合、集中力が切れやすく効率的に作業をこなすことが難しい場合があります。脳の集中力にはブドウ糖の摂取が効果的であるとされ、集中力が続かない場合にはブドウ糖を摂取するとよいでしょう。

・こまめにメモを取る

こまめにメモを取ることで情報をアウトプットし、メモを見返せば思い出す仕組み作りをしましょう。メモを取った情報は、「忘れてもよい情報」として脳が認識するため、ワーキングメモリの働きが活性化します。

ワーキングメモリを鍛える方法とは?解放する方法も解説

自身のワーキングメモリの働きが低いのが気になる場合は、調べてみるのも1つの手です。以下では、ワーキングメモリの機能を調べる方法について解説します。

 

4-1.AWMA

AWMA(Automated Working Memory)とは、イギリスのピアソン社が販売しているテストの名称です。

ワーキングメモリの4つの要素である「視空間的短期記憶」「言語的短期記憶」「視空間性ワーキングメモリ」「言語性ワーキングメモリ」を検査可能です。1つの要素につき3課題の計12課題から構成されるテストを受けます。

 

4-2.HUCRoW

HUCRoWとは、通称フクロウと呼ばれる広島大学大学院人間社会科学研究科の湯澤正通教授によって開発されたアセスメントツールです。

小・中学生を対象に作られており、8つのゲームを受けさせてワーキングメモリの4つの要素のアセスメントを行います。アセスメントとは、人や物事を客観的に評価・分析することを指します。

出典:一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会「簡易版HUCRowについて」

 

4-3.WAIS-IV

WAIS-IVとは、ウェクスラー・ベルビュー知能検査を起源とする長い歴史のある知能検査です。

検査対象年齢は16歳〜90歳11か月と範囲が広く、大人向けに利用されています。検査方法は心理カウンセラーなどの専門家が検査対象者と1対1で実施する個別式検査です。また、実施時間は60分〜90分程度かかり、検査が出るまでに1週間程度期間を要します。

出典:日本文化科学者「WAIS-IV知能検査」

 

まとめ

ワーキングメモリとは、作業時に必要となる情報を一時的に記憶し処理する能力のことです。物事の優先順位や記憶を一時的に覚える、不要な情報を忘れるといった日常において重要な役割を果たしています。機能が低下すると物忘れや言われたことを忘れ、生産性が低下する恐れがあります。

ワーキングメモリはADHDや学習障害といった発達障害の症状に関連した部分があるものの、関連性を結論づける研究結果はありません。AWMAやHUCRoW、WAIS-IVなどのテストでワーキングメモリの機能が調べられます。自身のワーキングメモリの働きが気になる方は、調べてみるのも1つの手です。

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