ホーム » コーヒーブレイクコラム » ワーキングメモリを鍛える方法とは?
物忘れやケアレスミスが気になる場合、ワーキングメモリを鍛えることで悩みを解消できることもあります。ワーキングメモリを鍛えることで、作業・動作に必要な情報の記憶を長く定着できるようになるでしょう。
当記事では、ワーキングメモリの基本情報を説明したうえで、ワーキングメモリを鍛える方法を紹介します。新しい情報を取り入れるために必要な容量を増やす方法として、ワーキングメモリを解放する方法も紹介しますので、日常生活や勉強、仕事を効率的に進めたい方や記憶力を高めたい方はぜひ参考にしてください。
ワーキングメモリ(workingmemory)とは、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶、処理する能力のことです。認知心理学の研究に基づいた概念で、「作業記憶」や「作動記憶」と呼ばれる場合もあります。日常生活の中における行動や判断に影響しており、脳の前頭前野がワーキングメモリの処理能力に大きく関わっています。
ワーキングメモリの働きを大まかに分けると、記憶、整理、削除の3つです。たとえば人と会話するとき、下記の作業が無意識に行われています。
1 | 相手の話を一時的に覚える(記憶) |
---|---|
2 | 話の内容や相手の意図を理解し、反応する(整理) |
3 | 必要な情報を長期記憶として残し、不要な情報は忘れる(削除) |
日常会話のみならず、勉強や仕事においても情報の記憶や取捨選択は欠かせません。
一般的に、頭が良い人のイメージと言えば、相手の意図を汲み取る能力や、物事を理解・処理する速度が優れている人物のことです。生産性や学習能力の高い優秀とされる人物ほど、ワーキングメモリが活発に働いていると言えます。
ワーキングメモリの低下は、日常生活に多くの影響を及ぼします。たとえば下記のトラブルは単純な物忘れではなく、ワーキングメモリの低下によって起きている可能性があります。
上記は、学校生活で起こることの多いトラブルです。気を付けているつもりでも、ワーキングメモリが低下していると忘れ物やケアレスミスが起こることがあります。
見方を変えると、「忘れやすい」「ミスしやすい」などの問題は、ワーキングメモリの働きを向上させることで軽減できるとも言えます。ワーキングメモリの働きが向上すれば、予習した内容を思い出しつつ授業に取り組めたり、大切な提出物を忘れずに通学鞄へ入れたりできます。
学校生活をトラブルなく送る、勉強を効率的に進めるためには、ワーキングメモリのスムーズな働きが重要です。
勉強の効果を向上させるために、まずはワーキングメモリが低下していないか確認しましょう。自分のワーキングメモリが円滑に働いているかどうか調べる方法は、次の通りです。
1 | 紙に5つの単語(バラ、くるま、など、それぞれ関連性のないもの)を書く |
---|---|
2 | 5つすべて覚えるまで、声に出して繰り返し読む |
3 | 1で使用した紙を伏せて見えないようにする |
4 | 2分以内に動物の名前を10個、別の紙に書き出す |
5 | 2分以内に1で覚えた5つの単語を紙に書き出す |
6 | 4と5それぞれ単語をいくつ書けたかチェックする |
動物の名前は回答1につき2点、最初に覚えた単語5つは回答1につき6点の配点(全問正解で50点)です。獲得した点数に応じて、下記の配点表でワーキングメモリの状態を把握できます。
配点 | ワーキングメモリの働き |
---|---|
0~10点 | 低下している |
11~20点 | やや低下している |
21~30点 | 普通 |
31~40点 | やや高い |
41~50点 | とても高い |
「やや低下している」「低下している」に当てはまった場合は、対策としてワーキングメモリを鍛える方法があります。ただし、そもそもの脳機能には個人差があるため、あくまでトレーニングである点に注意しましょう。
ワーキングメモリを鍛える方法を4つ紹介します。
ジョギングしながら頭の中で足し算するなどのデュアルタスクを行いましょう。
デュアルタスクとは、同時に2つの動作を行うことです。いわゆる「ながら作業」のことを指しており、会話しながら運動したり先生の話を聞きながら板書をノートに書き写したりすることも、デュアルタスクにあたります。
デュアルタスクで2つの異なる動作を行っているとき、脳は混乱した状態です。内容を整理するために脳を活発に働かせることが、ワーキングメモリのトレーニングにつながります。ワーキングメモリが鍛えられると、デュアルタスクのような複雑な動作もさほど意識せず実行できるようになります。
ワーキングメモリを鍛えるためには、十分な睡眠をとることも大切です。睡眠と記憶力は密接に関係しており、睡眠不足は脳の記憶を整理、貯蔵する役割に悪影響を及ぼすとされています。
厚生労働省でも、睡眠の重要性について言及しています。
睡眠は休養に必須であるだけではなく、記憶・気分調節・免疫機能の増強など、さまざまな精神機能や身体機能に関連しているとされます。
引用:厚生労働省e-ヘルスネット[情報提供]「健やかな眠りの意義」/引用日2022/10/18
脳に記憶を定着させるだけであれば、繰り返し学習する方法もあげられます。しかし、脳への定着を長続きさせたり、新しい情報を記憶しやすいように容量を開放したりするためには、睡眠が欠かせません。
休養に加えて、ワーキングメモリを鍛える目的でも十分な睡眠を心掛けましょう。まとまった睡眠時間が確保しにくい場合は、仮眠をとる方法もおすすめです。
もっとも手軽にワーキングメモリを鍛える方法は、単純な計算を繰り返すことです。買い物をするときに合計金額を自分で計算したり、電車通学中に同じ数字を足していく暗算をしたりなど、日常生活の中でも実践しやすいトレーニングです。
数独やナンバープレイスなど数字を使用したゲームや、短期的にカードの位置を覚える神経衰弱は、遊びつつワーキングメモリを鍛えたい方に向いています。
楽しみながら実践できるトレーニングとして、新しい言語の学習もおすすめです。無意識に意味を理解できる日本語とは異なり、新しい言語は発音や書き方、意味など覚えるべきポイントが複数あります。
「この単語はどのような意味があるか」「文法で日本語と異なる部分はどこか」と、覚えよう、理解しようとするほど、脳の活性化につながります。
ワーキングメモリの働きの中には、情報を整理して不要な部分を削除することも含まれます。継続的に新しい情報を取り入れるためには、認知機能が働きやすいように脳の容量を空ける必要があるためです。ワーキングメモリは鍛えるものではなく、開放することが重要という意見もあります。
ワーキングメモリを解放するとは、アウトプットすることです。一時的な記憶を外へ出すことにより、常にワーキングメモリが新しい情報を取り入れられる状態にします。
ワーキングメモリの解放につながるアウトプット方法として、次の3つがあげられます。
今日中にするべきことをメモに取る行為は、ワーキングメモリ解放につながります。記憶すべき情報量を減らしつつ、予定に優先順位をつけて整理することが可能です。
たとえば、勉強と課題の両方を今日中に済ませなくてはならない場合、メモを取ると覚えておく必要がありません。ワーキングメモリが低下していても、メモ帳や目につきやすい場所に書き残しておけば、ふとした拍子に勉強や課題の予定を思い出せます。
思考の外に文字として出すと記憶しておく必要がなくなる分、新しい情報を取得したり整理したりできます。
すぐに対応できることは優先して処理する方法もあります。後回しにすると、覚えておくためにワーキングメモリを使用したり忘れたりするおそれがあるためです。
場合によっては、優先順位が低いものこそ先に終わらせたほうが、多くの時間やワーキングメモリを他の用事に回せます。行動にすぐ移せる用事は先に済ませておき、思考や時間が必要な予定のためにワーキングメモリを解放しましょう。
メモを取るときは、より具体的に情報を書き出すのがおすすめです。メモはいわば短期的な記憶の置き場にすぎません。何を優先すべきか、勉強をどこからどこまで今日中に済ませるかなど、こまかく情報を書き出すことでより多くのワーキングメモリの解放につながります。
視覚的に情報を整理することで、自分の状況を整理しやすくなるメリットもあります。
ワーキングメモリとは、作業・動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力のことです。日常生活における行動や判断に影響しており、ワーキングメモリを鍛えることで物忘れやケアレスミスの軽減を期待できます。
ワーキングメモリを鍛えるには、2つの異なる作業を同時にするデュアルタスクや暗算を行う、新しい言語を学習する他、良質な睡眠をとることも大切です。また、ワーキングメモリを解放することで容量を確保し、メモリの低下を防ぐ方法もあります。
今回紹介した方法を参考にワーキングメモリを鍛え、情報の記憶・処理能力を高めましょう。