近年では仕事でパソコンを使用する方が多く、作業中に目が疲れたと感じる方も少なくありません。ドラッグストアでは多くの目に疲労を感じたとき用の目薬やアイマスクなどが販売されていますが、そもそも目が疲れないよう対策することが大切です。
当記事では、パソコン使用で目が疲れる原因や疲れたいための対策法、また目が疲れてしまったときの対処法を解説します。最近目が疲れると感じる方は、ぜひお役立てください。
パソコンを長時間使用していると、さまざまな理由から、目の疲れを感じることがあります。パソコンの使用で目が疲れる主な原因は、「眼精疲労」「ドライアイ」の2種類です。
以下では、眼精疲労とドライアイではそれぞれなぜ目が疲れてしまうのかを解説します。
長時間にわたって目を酷使していると、眼精疲労が起こります。眼精疲労の主な症状は、目の痛みやかすみ、まぶしさ、充血などです。頭痛や吐き気、肩こりなどの全身症状が現れることもあります。
眼精疲労の原因は、目の筋肉である「毛様体筋(もうようたいきん)」の緊張です。毛様体筋は、カメラのレンズにあたる「水晶体」の厚みを変えて、ピントを調節しています。遠くのものを見るときは毛様体筋をゆるめて水晶体を薄くし、近くのものを見るときは、毛様体筋を緊張させて水晶体を厚くします。
手や脚がずっと緊張状態であると疲れるように、毛様体筋も緊張状態が続くと疲れ、それが眼精疲労と呼ばれます。パソコンやスマホ、ゲームなどによる長時間作業は毛様体筋の緊張状態が続くため、目にとっては大きな負担です。毛様体筋の疲労が慢性化すると、やがて重い眼精疲労につながります。
また、加齢によっても、目のピント調整機能は衰えます。無理にピントを合わせようとすると眼精疲労が悪化するため、自分の視力に合わせた眼鏡などの使用が大切です。
ドライアイタイプはその名の通り、目の乾燥によってさまざまな症状が起こります。代表的な症状は、目がゴロゴロする、かすむ、目ヤニが出る、涙が止まらないなどです。
ドライアイの原因は、目の表面を保護している「涙液膜」が崩れることです。涙液膜は、油層と水層の2層からできています。この層が崩れると、目の表面の細胞に傷がつきやすくなり、角膜が傷つくと涙の蒸発量が増えて、ドライアイがさらに悪化します。
パソコンやスマホ、ゲームなどの長時間利用は、ドライアイが悪化する要因の1つです。画面を集中して見ているとまばたきの回数が減り、目の乾燥を招きます。コンタクトレンズやエアコン、年齢なども危険因子です。また、ドライアイは、男性に比べて女性のほうが罹りやすいとされています。
近年では、パソコンやタブレット、スマホなどの電子機器を使用した「VDT(Visual Display Terminals)作業」が増えています。VDT作業は利便性が高い一方で、長時間の作業により、目の疲れをはじめとするVDT症候群に悩む人も少なくありません。
長時間のパソコン業務では、目の疲れを感じるまでに対策をすることが大切です。ここでは、パソコンの使用で目が疲れないための対策について解説します。
モニターと目の距離が近すぎると、目が疲れやすくなります。適切なモニターとの距離は、40cm以上が目安です。視線はモニターの正面か、やや下向きに設定します。画面を見上げるような姿勢は、目が乾燥しやすくなるため注意が必要です。
外光や照明がディスプレイ画面に反射すると疲労が増えるため、室内の明るさは500ルクス以下が適切とされています。カーテンやブラインドを使用するか、ライトが画面に映り込まないノングレアパネルの液晶ディスプレイを使うと効果的です。また、室内照明と画面の明るさに、差異が出ないような作業環境にすることも重要です。
目の疲れには、ブルーライトも影響していると言われています。ブルーライトは、可視光線の中でも刺激が強いのが特徴です。ブルーライト対策としては、液晶画面の色温度を調節する、ブルーライト対策メガネをつける、などがあります。
長時間パソコンの画面を見続けていると、目の筋肉が凝り固まってしまうため、適度に休憩を取り入れましょう。休憩時間の目安は、1時間あたり5~15分程度です。
休憩中は、目を閉じるか、遠くを見るなどして目を休めます。席を立って歩く、ストレッチをするなどの運動をすれば、全身の凝りをほぐせるでしょう。
目の乾燥を防ぐには、作業空間の乾燥を防ぐことが重要です。エアコンの風が直接当たらないような環境を整え、必要に応じて加湿器を使用し、部屋の湿度は60%程度にしましょう。
また、意識的なまばたきも大切です。まばたきには涙で目を潤すほか、目の周りの筋肉を刺激する働きもあります。目薬の使用や、目の疲れをとるツボ押しなども有効です。
目の乾燥対策として、目を温める方法もあります。目を温めると、熱によって目の筋肉がゆるみ、血行促進につながります。蒸しタオルなどをのせるほか、手のひらをこすって、やさしく目を覆うだけでも温めることは可能です。目が充血している場合や熱っぽい場合は、反対に冷やしてみるとよいでしょう。
コンタクトや眼鏡の度数は、定期的に見直すことが必要です。知らない間に視力が衰えているケースもあるため、最低でも1年に1回は視力検査および度数の見直しを行います。視力の衰えや度数のズレによる眼精疲労は、目の乾燥対策などでは解決できません。
度数が合っていても、遠くを見るのに適したレンズで近くを見続けると、眼精疲労の原因になることもあります。コンタクトレンズは長時間使用していると目が乾きやすくなるため、乾燥を感じたら眼鏡に変えたりコンタクト用の目薬をさしたりするとよいでしょう。
パソコンの使用で目が疲れたとき、症状が軽い場合はセルフケアでも対応可能です。しかし、症状が重い場合や、セルフケアを続けていても症状が改善しないときは、眼科の受診をおすすめします。目や全身の病気が原因で、眼精疲労になっている可能性もあるためです。
ここでは、目に疲れを感じたときの対処法として、簡単にできるセルフケアを紹介します。
パソコンやスマホの画面を見続けていると、まばたきの回数が減りがちです。意識的にまばたきの回数を増やし、涙の分泌を促しましょう。このとき、上まぶたと下まぶたをしっかり閉じることが大切です。
長時間のパソコン作業では、こまめな休憩も重要です。目を休ませると、近くを見続けることによる目の緊張が和らぎます。目を閉じるだけでなく、遠くを見るのも有効です。
目を温めると血管が広がって、目の周りの血流がよくなります。また、緊張状態にあった筋肉がゆるみ、凝りもほぐれます。目の疲れを和らげることで、涙の分泌を安定させる効果も期待できるでしょう。
ただし、、血管が拡張しているため、反対に目の周りを冷やします。冷やしすぎて血流が悪化しないよう、冷水で絞ったタオルなどでやさしく行いましょう。温めると冷やすを交互に行う方法もあります。
目の体操や目の周りのマッサージをすると、こわばった筋肉がほぐれます。眼球を上下左右に動かしたり、目をギュッと閉じたりなどして、目の周りの筋肉を動かしましょう。
目の周りには、疲れをとるツボがたくさんあります。よく知られているのは、こめかみや眉間のくぼみ部分などです。指のはらを使ってゆっくりやさしく刺激し、眼球は押さないようにしましょう。目の周りのマッサージをすると、疲れによる目元のむくみもとれます。
目薬には、瞳に潤いを与えるタイプのものから、爽快感があるもの、栄養素を与えるものなど、多くの種類があります。適切な目薬を選ぶことで目の疲労感を和らげ、リフレッシュできるでしょう。疲れ目対策に効果的な成分としては、ビタミンAやビタミンB群、ビタミンEなどが知られています。
目薬は、医療機関で処方してもらうだけでなく、市販薬を購入することもできます。市販の点眼薬を使うときは、自分の症状や好みの使用感にあったものを選びましょう。
パソコンの使用で目が疲れるのは、近い距離感で画面を見て目の毛様体筋が緊張し続けることで起こる眼精疲労か、目を長時間開けて乾燥しドライアイになっているためです。眼精疲労やドライアイを起こさないようにするには、画面の明るさや距離感、部屋の湿度を調節し、目が乾燥しないようまばたきを意識しましょう。
作業に集中するあまり目が疲れてしまったという場合は休息を取り、目を温めて筋肉をゆるめ緊張状態をときます。目薬で眼に潤いを与えて、乾燥状態を改善するのもよいでしょう。